ウェビナー(2022/12/9 開催)採録
2023.01.26
昨年12月9日(金)に、ベクトル演算機「SX-Aurora TSUBASA」による高速演算の有用性およびAI・量子
コンピューティングへの今後の展開に向けた動向をご紹介するウェビナー
『既存環境に共存できるAI開発&量子コンピューティングとは!? ~解は「SX Aurora TSUBASA」~』が
開催されました。
PART1.
SX-Aurora TSUBASA
AI/ビッグデータ領域での活用と量子コンピューティングへの取組
NEC プラットフォーム販売部門 SW・サービス販売推進統括部 シニアディレクター
柴田 美千代 氏
AI/ビッグデータ領域におけるSX-Aurora TSUBASAの活用
AI(機械学習)の特性は、大きく2つに分けられます。深層学習(ディープラーニング)と統計型機械学習という領域で、例えばディープラーニングのようなものだとGPUがたいへん得意な領域であり、統計型機械学習のように大量のデータを使う分析についてはベクトル型プロセッサが一番得意とするところです。機械学習の世界では、高い計算パワーを要求しますが、得意不得意があるため、適材適所・ハイブリッドで活用することをおすすめしています。
ベクトル型プロセッサを採用したスパコンに関して、NECは1980年代から取り組んでおり40年近い歴史を誇っています。昔ですと気候変動や様々な設計シミュレーションでご活用いただき、JAMSTEC様の地球シミュレータは何世代もご活用いただいている実績があります。
2018年からは「SX-Aurora TSUBASA」としてその技術を小型化することに成功し、こちらを市場に提供しています。
SX-Aurora TSUBASAの概要
スパコンと聞くと、大きな黒い筐体がたくさん並んでいるのをイメージする方も多いと思いますが、SX-Aurora TSUBASAはその技術を、ギュギュっと赤いカードに閉じ込め、拡張カード型として提供しています。小型のものなので、例えばお手元のデスクサイドに置くようなデスクサイドスパコンとしてや、従来のようにこのエンジンカードをたくさん差して多機能高性能な大規模なシステムとしてなど、幅広い用途に対してサポートできます。用途の広がりを受け、100以上の団体や企業でご採用いただき、出荷累計2万枚を超え、大変多くご利用いただいています。
SX-Aurora TSUBASAの特長
1. 超高性能
SX-Aurora TSUBASAの一番誇る特長です。一気にデータを取り込んで、一気に計算し、一気に処理するプロセッサのため、これだけでも大変高性能と言えます。それぞれのコアについても、演算処理、データアクセス性能どちらもNECの技術の結集した、性能が高いものになります。
アーキテクチャを見ると、一般的にGPUはアプリケーションの中の関数を次々と呼び出しながらデータの受け渡しをして処理を行っているので、データの移送が頻発すると、それが性能のボトルネックになるケースがあります。SX-Aurora TSUBASAはアプリケーションをベクトルエンジンで動かして、その上で稼働させるのでボトルネックがあまり発生せず、アーキテクチャ的にも性能がよいと言えると思います。
2. 使いやすさ:プログラミング
解析シミュレーションですとC++やFortranで開発されるケースが多いと思いますが、SX-Aurora TSUBASAはこのようなプログラムをそのままご利用いただくことが可能です。例えばGPUでは、一部CUDAと呼ばれるような専用の言語で書き変えなければいけないケースもありますが、それと比べると開発工数や今までの技術をそのまま使っていただけるという意味で優位だと思います。
さらに最近は、AIやビッグデータ解析ではPythonを使って開発するケースも多いと思います。NECではそのような用途に対し「Frovedis」というミドルウェアを提供しています。「Frovedis」で提供するモジュールをコードやアプリケーションの最初と最後で指定するだけで、実証結果になってしまいますが、最大100倍以上の高速化が実証できています。
3. 豊富なラインアップ
デスクサイドにおけるエッジモデルからオンサイトモデル、複数のカードを差して従来型のスパコンの利用用途で大規模に使うことができます。さらには、既存の筐体にカードを差して使用できるよう、カード単体も提供しています。(※筐体には条件があります。)NEC Expressサーバでも提供しています。
量子コンピューティングへの取り組み
量子コンピューティングは大きく分けると量子ゲート方式とアニーリング方式があります。量子ゲート方式は従来のコンピュータのビットを量子ビットに置き換えて計算する手法で、多種多様な用途で使えるのではないかと各研究所がしのぎを削っています。しかし実用にはもう少し時間がかかるのではないかと思います。
一方、アニーリング方式というのは組み合わせ最適化問題を解くことに特化した手法です。これは実用化が進んでおり、いくつか実例も出てきています。
アニーリングマシンができることは、組み合わせ最適化問題を効率的に解くことです。組み合わせ最適化問題は膨大な選択肢の組み合わせの中から、ある一定の条件を満たす組み合わせを瞬時に見つけることです。
NEC Vector Annealingサービス
オンプレミスとクラウドサービス双方で利用できる、SX-Aurora TSUBASAを含むハードウェア、OS、ミドルウェア、そしてその上で動くアニーリングソフト一式を提供。一番の特長は、このアニーリングソフトがNECの研究所の知見を結集した独自開発の誇る技術力ということと、さらにSX-Aurora TSUBASA上で稼働することで超高速に処理できるということです。さらに最近強化を行い30万量子ビット相当の大規模な組み合わせ最適化問題にも対応できるようになっています。
2点目の特長は、利用シーンに合わせたサービス提供です。クラウド型については国内業界最安値ではないかと思っているのですが、簡単に気軽にお使いいただけるスタンダードプランから本格的な業務で活用いただけるプロフェッショナルプランの2つをご用意しています。持ち出し困難なデータ利用したいお客様向けにオンプレミス型も提供しています。
PART2.
汎用アプリにも対応可能なVTオリジナルSX-Aurora TSUBASAシステムの
導入事例
ビジュアルテクノロジー HPC/エンタープライズ事業本部 テクニカルSE部 副部長
鷲尾 浩伸
SX-Aurora TSUBASAの特長
SX-Aurora TSUBASAは、多数のデータに同時に同じ演算を行うベクトル処理に特化し3.07TFlopsの演算性能と1.53TB/sのメモリ帯域を持つ世界トップクラスのベクトルエンジンです。
NEC様のサーバラインアップに加え、SX-Aurora TSUBASAをオリジナル筐体に搭載するにあたり「VE搭載サーバをご要望に合わせて、カスタマイズ」いたします。プリ・ポスト処理も含めAll in Oneで、デスクサイドで使いたい、GPUやFPGA等のアクセラレータとの共存利用や、HPCクラスタの一部ノードにSX-Aurora TSUBASAを搭載する、などのご利用方法を提案しています。
前述のハイパフォーマンスであることやラインアップの多さのほかに、主要言語での開発環境、自動ベクトル化や複数ベクトルエンジンカードでのMPI計算の実行、AI向けのライブラリ等の拡充など、ソフトウェア面でも様々な開発実行環境に対応しています。また、実際に数値計算に利用できるアプリケーションは、ライブラリのサポートも含めて日々拡充されています。ビジュアルテクノロジー(以下VT)では計算科学向けのVASPや、流体・CAE解析向けのFrontFlow/blueなどの分野で多数の実績があります。
計算機システムの構成要素としては、低階層からCPUやメモリ等のベースシステム、アクセラレータとしてのSX-Aurora TSUBASAなどのハードウェアがあり、その上にOS・コンパイラやミドルウェアがあり、実際に多くの時間触れることになるアプリケーションと、このような構成が基本的な最小構成として考えられます。VTではこれらをまとめて、一体のトータルシステムとして提供しています。
さらに、高密度、高並列クラスタ構成での提供も行っていますが、その際は、高効率なタスク実行環境を提供するジョブスケジューラーや非常に低いレイテンシを誇るInfiniBandインターコネクトによる接続が基本となります。
導入事例の紹介
SX-Aurora TSUBASAの利用形態として、1つ目はデスクサイド等でプリポス等でも利用できる小規模ワークステーションのラインアップとその導入事例です。
SX-Aurora TSUBASA A100シリーズはエッジモデルとしてリリースされているもので、まず紹介するのは、慶應義塾大学 日吉物理教室様に納めたものです。導入にあたりベクトル演算への効果に対しては当初から大きな期待をしていただいていましたが、実際の有効性や稼働環境に対しての不安を抱いておられました。これらの不安を払拭していただくために、VTからはトライアル環境や技術支援を提供し、動作検証やベンチマーク、支援体制を含めたコミュニケーションを重ねることで不安を払拭いただき、ユーザー様も納得の上で、導入の決断に至りました。
2つ目の例は、オンサイトモデルとして展開されているラックマウント型の製品で、大手建設会社様や東北大学・サイバーサイエンス関係の研究室様にお納めしております。東北大学様の例ではVTオリジナルサーバー筐体を利用して、4ベクトルエンジンのシステムで納入し、後日さらに4ベクトルエンジンを追加して計8ベクトルエンジンで運用いただいています。単体でのパフォーマンス・拡張性についてはもちろんですが、純正サーバー・オリジナルサーバー共に安定性の高さについても好評です。
専用のサーバールームを用意できず居室等にやむを得ず設置するようなユーザー様からのご相談も多数あります。製品ページにも表記されているように、SX-Aurora TSUBASAは冷却環境に対してややシビアな製品群となっていますので、システムを冷やすための冷却ファンの風切音は相当な音量になります。静音性に配慮が必要な環境への設置では二の足を踏んでしまうようなシチュエーションもかなり見受けられます。そのような環境でも騒音の悩みが軽減できる、静音ケースをご用意しています。最大で25デシベルの静音化効果のある専用ケースで、民間企業様をはじめ大学研究室様等に多数導入しご好評いただいています。
最後の導入事例は、大規模計算に対応したクラスタ構成です。クラスタ構成ではVE搭載計算機を多数揃えたクラスタ構成はもちろん、CPUメイン機とGPU搭載機を混合したクラスタとしても構築しています。ジョブスケジューラーを用いることで、SX-Aurora TSUBASA・CPU・GPUそれぞれに適切にジョブを振り分けることができます。NEC様が販売しているNQSVのほかに、普段PBS Professionalを使用していて、使い慣れたものを継続したい場合も選択が可能です。
VTオリジナル筐体で実現する利用環境と目的に応じたハイブリッド環境
NEC様謹製の筐体ではサポートされていませんが、SX-Aurora TSUBASAとGPU等との筐体内ハイブリッド構成が可能です。NEC純正にはない柔軟なシステム設計、大容量メモリやストレージ、メニーコアCPU、高速インターコネクト等々、HPCシステムに必要とされるこれら要素をカスタマイズ可能です。これらの構成として検討されているものは、組み合わせ最適化に対応したSX-Aurora TSUBASA SDKを利用し、シミュレーテッドアニーリングとGPUによる回路シミュレータ(cuQuantum)を共同動作させることで、さらに汎用的なアルゴリズム開発・問題解決への利用を模索しています。
量子コンピューティングの中でも組み合わせ最適化で利用できる高速化システムはすでにリリースされています。実社会に無数に存在する組み合わせ最適化問題をアニーリング型量子コンピューティングをシミュレートすることでハイコストパフォーマンスな解決環境を提供します。すでにHPC向けにSX-Aurora TSUBASAを導入されている方も、ベクトルAnnealing SDKを導入することで、アニーリング型量子コンピュータとして利用できます。
最後に、汎用筐体を利用するにあたり、少しだけネガティブな話題ですが、これまで多くのお客様に汎用の計算機筐体に搭載したSX-Aurora TSUBASAを導入いただいていますが、様々な筐体を用いて検証してきた中で、いくつかの留意点が見えてきています。基本的には冷却に関するものが多いですが、一部にはBIOSレベルでのチューニングが必要になるような筐体も確認されています。このようなシャーシに起因する不具合が発生する可能性もありますが、システム提供の際にはもちろんVTにて対応可能なシャーシを検証・選定しておりますのでご安心ください。
PART3.
SX-Aurora TSUBASA や量子コンピューティングを支える
サーバーのご紹介
スーパーマイクロ FAE プリンシパルFAE
本間 延孝 氏
SX-Aurora TSUBASA ベクトルエンジンを搭載するプラットフォームとしての製品
ベクトルエンジンを使うにあたり、演算プロセッサは大量の電力を使って計算をするため、その時に大きな熱を出します。コンピュータのプラットフォームとして電力供給がしっかりでき、冷却もしっかりできる製品でないと、アクセラレータをきちんと動かすことができません。スーパーマイクロのサーバ製品は、タワー・1U・2U・4Uなど様々なものがありますが、ベクトルエンジンで検証済みのものを使う必要があります。(20B-P パッシブ型のヒートシンクで冷やすタイプ、20B-A ファンがついていて自身で冷却できるタイプ)
ピンクの枠内、タワー型のワークステーションをお選びいただくと、最大4つのアクセラレータを搭載できるというケイパビリティがありますので、比較的にすんなりお使いいただけると思います。
その他、大規模演算されるお客様向けもあります。ぜひ、お客様にとって最適なものをご相談させていただければと思います。
▼ ウェビナーの動画はこちら
https://youtu.be/4zBZNbGfTwM
▼ ウェビナー内で使用されたスライド資料はこちら
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